綱領・基本方針Policy
1 現代の日本社会が抱える課題
(1) 人口減少・少子高齢化のインパクト
我が国は今、国際社会がこれまで経験したことのない人口減少・少子高齢化に直面している。国立社会保障・人口問題研究所の中位推計では我が国の人口は2050年代半ばまでに1億人を下回り、その後10年間でさらにおよそ1,000万人減少すると報告されている。他方で高齢化率は増昇を続け、同研究所「日本 の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、2040年の高齢化率(中位推計)は35.3%となり、実に3人に1人以上が高齢者となる超高齢社会が訪れる。
労働力人口は、独立行政法人労働政策研究・研修機構の2018年度版推計によると2020年の6,577万人から、2040年には5,460万人まで減少する(ゼロ成長・労働参加現状シナリオ)。
人口減少のインパクトは経済成長と税・社会保障に係る問題にとどまらず、いわゆる限界自治体の増加など社会問題、地域問題にも直結する。これまで指摘されてきた島嶼部や中山間地でのインフラ保全の困難さにとどまらず、全国的な問題として、人口減少による町の活力低下や、見回りや防災といった共助に基づく社会的機能の喪失など、市町村合併のみによっては解決し得ない、町そのものの衰退が今後より一層顕著になっていくことが予測されている。
(2) 東京一極集中と地方の衰退
このような状況に一層拍車をかけているのが東京一極集中の現実である。我が国においては明治の廃藩置県以来、中央集権型の政府構造を続けてきた結果、政治・経済・文化の中心が殆ど東京に一極集中し、今や地方都市から人口を吸い上げる強力なストロー現象を引き起こしている。
これによって地方からは企業や若者が仕事や文化を求めて流出し、情報・交通網の発達によってそれらの流れは一層加速している。
東京への一極集中は、地方の衰退を加速させるのみならず、首都直下型地震をはじめとした大規模激甚災害や、テロリズム等による首都機能のマヒが発生した際に、我が国全体が機能不全に陥ってしまう危険性を増大させている。
(3) 規制による産業競争力の消失
中央集権体制による弊害は我が国の産業競争力の面においても大きな影を落としている。霞ヶ関を司令塔とした全国一律の規制行政は、民間企業や地方自治体等の自由な挑戦を阻害し、労働生産性の向上や新産業の興隆を産みにくくした結果、主要先進国がこの四半世紀において名目GDPで200%以上成長しているのに対して、我が国の成長率は114%と、低迷が顕著である。(IMF“World Economic Outlook Database"をもとに1993年から2018年の比較で計算)
(4) 国と地方の役割分担の曖昧さによる国会議論の遅滞
国・広域自治体・基礎自治体の役割と責任の分担が曖昧な我が国において、国防や社会保障、憲法改正等の国民生活の根幹を成す重大な議論が遅々として前進をみないのは必然の結果と言える。
一国の総理大臣が地方自治体の待機児童の問題について答弁を求められることに象徴されるように、我が国の政治構造は枝葉末節に至るまで国会での議論にかけられ、地方自治体は中央官庁の指示に倣うという慣例がまかり通っている。
国会では国家の重要案件のみならず、特定地方の限定的な案件までもが審議に付され、外交、国防、マクロ経済、社会保障といった国家の根幹を成す重要項目に十分な時間が割かれてない。
(5) 我が国の安全保障を取り巻く脅威
近年、中国、ロシア、北朝鮮等の国々による、我が国の安全保障に深刻な影響を与える動きが加速している。未だ解決を見ない北朝鮮による日本人拉致の問題は決して過去のものではなく現在進行形の犯罪行為であり、我が国の主権を脅かす重大な問題である。
また、中国およびロシアの航空機または艦船による我が国領空、領海への侵入が相次いでおり、自衛隊によるスクランブル発進は近年、年間900回を超える。北朝鮮による弾道ミサイルと目される飛翔体の発射実験は定期的に行われており、我が国の排他的経済水域に落下する事案も発生している。
科学技術分野における研究員の買収や、サイバー攻撃等による諜報活動も依然として世界中で苛烈に行われており、グローバル化やDXの進展に伴ってこれらの分野への対策はより一層重要度を増している。
このような国際情勢の中、我が国が主権と国民の生命と財産を守るためには、従来の外交ルートを通じた活動に留まることなく、法整備を含めた現実的な防衛体制の構築と、実効性のある抑止力の保持が急務である。
日本維新の会は以上のような現実から目を背けることなく、これからの世代のための新しい日本を創り上げていく。
2 目指すべき社会と結党の理念
(1) 結党の理念
『これまでの政治の延長線上に豊かな国民生活を実現することはできない』
失われた30年とも言われる日本の政治・経済の現実を直視して、我々日本維新の会がたどり着いた確固たる結論である。
従って、私たち日本国民にはこれまでの慣習を打ち破り、新しい政治の実現によって日本の未来を豊かにする、新たな政治勢力が必要である。
私たちは、地方から国の形を変えることを目的に日本維新の会を設立した。
日本維新の会は、東京の本部を頂点とするピラミッド形の既存政党とは全く異なる組織形態をもち、既存の中央集権型政党とは本質的に異なる地方分権型政党である。地方の議員や首長がダイレクトに国の意思決定に参画し、役割分担しながら分権を進める。
日本維新の会は、「自立する個人、自立する地域、自立する国家」を理念に掲げ、我が国が抱える本質的な問題の解決に真正面から取り組み、具体的かつ現実的な提案と、建設的な議論によって、社会課題の解決と、国民生活を豊かにすることを結党の理念とする。
(2) 日本維新の会が目指す日本の未来社会
① 地方主導による統治機構改革
現代社会においては人々の生活様式の多様化が進み、地域ごとに抱える課題も細分化される中で、中央集権体制による画一的な政策が非効率な行政を生み出し、あるいは地域の実情に沿った課題解決につながらないといった問題が表面化している。
日本維新の会はこの状況に鑑み、中央省庁の持つ権限を大きく地方自治体に移譲し、我が国の統治機構のあり方を中央集権体制から、地域のことは地域で決められる地方分権体制に移行すべきであると考える。
それぞれに異なる課題と、異なる地理的、経済的、あるいは文化的背景を有する各地域が、各々の特性と課題に応じて主体的に政策決定を行い、自らの財源によって自立した自治体運営を行うことのできるよう、権限と財源をセットで国から地方へ移譲することが、現代社会において最も民主的で、かつ最も効率的な地方自治のあり方である。
これらの統治機構の抜本的発想転換を、地方の主体的な政治努力によって実現することで、我々の目指す「自立する地域」のあるべき姿を将来に亘って獲得することができる。
② 地方政府の強化と国会機能の強化
地方政府の強化は即ち、地方ごとに政策の最適化を実現すると同時に、国会機能の強化にも寄与するものである。
中央官庁の敷く全国共通の制約に服することなく、地方政府が地方の自由な裁量によって自らの地域が抱える強みと課題を分析し、真に優先順位の高い政策を選択していくことによって、これまでのような全国一律の非効率な政策は排除され、地域の特性に応じた住民サービス、産業振興、あるいは真に必要な規制のあり方が実現される。
各地方の創意工夫に満ちた自由な意志による豊かさの追求は、我が国の都市間競争をより一層高いレベルへと押し上げ、住民生活の質を向上させるとともに、さらなる多様性と豊かさをもたらすことが期待される。
また、地方政府への権限移譲によって、多くの地域課題やそこに暮らす住民課題の解消は地方政府が専ら行うこととなり、中央政府の機能は国防や外交、税と社会保障、憲法の制定および改定等、国家の本質的かつ最も重要な役割に限定される。
③ 自由競争による切磋琢磨と、手厚いセーフティネットの構築
1989年には時価総額世界のトップ企業20社に、実に14社の日本企業が名を連ね、Japan as No.1と言われる輝かしい成功を収めた。しかし、現在では世界のトップ企業20社に名を連ねる日本企業は存在せず、アメリカ、中国はもとより、スイス・韓国・台湾などの企業に後塵を拝している。
日本維新の会は、強い規制で民間企業を政府がコントロールするという旧来の発想から脱却し、政府の役割は企業の自由な経済活動や組織改革、および新しい産業分野への挑戦を積極的に後押しする環境を整備することが必要と考える。企業の自由競争による切磋琢磨を加速させることによって成長分野に人とお金を集中させ、日本企業の国際競争力を取り戻すことが国力の回復と国民生活の向上につながると考える。
同時に、働く個人に対しては手厚いセーフティネットの構築を進め、誰もが公平にチャレンジできる社会の実現と、失敗しても何度でも再チャレンジができる社会を同時に実現する。
現在の生活保護のような、一度入り込んでしまうと抜け出すことが難しいセーフティネットではなく、新たなチャレンジを行うための職業訓練やリカレント教育の無償化を掲げ、国民ひとりひとりが「自立した個人」として豊かな社会の中で何度でも自己実現に向けた挑戦ができる最低所得保証制度を構築し、活力ある社会を実現する。
④ 持続可能な社会保障の実現
我が国の社会保障はその多くが高度成長期に作られ、その前提としている社会は終身雇用制度、多子人口増加社会、現在の社会からはかけ離れたものとなっている。
年齢による一律支給の年金制度、現役世代が高齢者を支える賦課方式は現代社会において満足に機能せず、国民の多くは将来に大きな不安を抱えている。
日本維新の会は、これらの制度を微調整、微修正するだけの古い政治体制から一線を画し、現代の社会に合わせて制度を抜本的に創り直すことを目指す。
現代社会においては、働き方の多様化とジョブシェアリング等の進展によって雇用形態も複雑化、不安定化し、人口構造は少子高齢化と人口減少によって現役世代にくらべ高齢者層が大きく膨らむ構造となっている。国民の間には富の偏在的蓄積が進み、金融所得の拡大が国民間に格差を押し広げ、国民の相対的貧困率は15%を超えている。
このような状況に鑑み、日本維新の会では税と社会保障の一体的改革を進め、受益と負担の公平化を図るとともに国民の所得格差を緩和し、国民生活の実態に即した持続可能な社会保障制度を構築する。
⑤ 国際社会においてリーダーシップを発揮する日本
資源の多くを外国からの輸入に頼る我が国において、諸外国との関係強化による食料、エネルギー、半導体・レアメタル等の戦略的物資をはじめとした資源供給の安定化は国民生活の持続可能な発展のために不可欠である。
また、我が国の安全を脅かす軍事的挑発行為等への対処、平和維持のための国際的枠組みの発展、および国境警備などに関する我が国の主体的な取り組みを加速させ、国民生活の安全を確保していくことは重大な課題である。
加えて、温暖化等の気候変動による海面上昇や気象災害、海洋プラスチック等の流出による海洋資源の破壊、大気汚染など、地球規模での持続可能性を担保するために国際的な協力体制が不可欠な課題に対しても、世界有数の経済と人口規模を有する我が国が果たす役割は一層高まっている。
日本維新の会は、先に挙げたように、内政における多くの国民課題の解決を地方政府へと委ね、中央政府が国家の存立と我が国を取り巻く国際社会の問題に総力をあげて取り組む体制を構築する。外交においては、世界が直面する課題に対して新たな構想と解決策を自ら提示し、つくり出していくことによって、国際社会の新たな方向性やルール策定において主導的な立場をとる。それにより、国際社会の平和と繁栄の維持・発展に一層貢献するとともに、世界の成長力を日本の国と地域の成長力として戦略的に取り込んでいく。こうした方策により、日本が国際社会で一層のリーダーシップを発揮し、国益の確保と国際平和への貢献を両立する、「自立する国家」となることを目指すものである。
3 新たな日本の実現のための基本的政策方針
(1) 統治機構改革
憲法を改正し、首相公選制、一院制(衆参統合)、憲法裁判所の設置を実現する。地方自治体に権限と財源を移譲し、地方の課題については地方の自由な裁量に任せる。国と地方が密接に関わる課題については、地方自治体が国家の意思決定に直接関与できる新しい仕組みを創設する。
(2) 地方分権と東京一極集中の是正
中央集権体制と東京一極集中を打破し、地方分権、多極分散型の国家構造を実現する。そのための第一歩として首都機能を担える副首都大阪をつくり、中央省庁をはじめとした首都機能の一部を移転することで東京一極集中から東西二極への構造転換を実現する。また、地方政府の権限強化(道州制等の導入)により、現在の融合型行政を改め、国と地方の水平的な役割分担による効率的な行政を実現する。
(3) 既得権益と闘う成長戦略
既得権益化した古い規制を撤廃し、産業構造の転換と労働市場の流動化を図る。経済の成長を阻害する要因を徹底的に排除しイノベーションを促進するとともに、衰退産業から成長産業への人材移動を支援する。組織や団体に対する過度な救済となっている補助金行政を見直し、産業構造のリノベーションを押し進めるとともに、働く個人を救済し、再チャレンジを後押しするトランポリン型のセーフティネットを構築する。
(4) 小さな行政機構
政府の過剰な関与を見直し、自助、共助、公助の範囲と役割を明確にする。公助がもたらす既得権を排除し、政府は真の弱者支援に徹する。
複雑な制度設計による行政機構の肥大化を否定し、シンプルかつ公平な制度設計による簡素な行政機構を実現する。
(5) 受益と負担の公平
受益と負担の公平を確保する税制度や持続可能な社会保障制度を構築する。事業の提供者サイドヘの税投入よりも、消費者サイドヘの直接の税投入を重視し、補助金行政による不公平の発生を可能な限り取り除く。
(6) 現役世代の活性化と、一人も取り残さない社会の実現
現役世代に偏った過度な社会保障の負担を軽減するとともに、将来世代の育成である子育ての支援を徹底的に強化し、現役世代の活性化と、世代間の協力および信頼の関係の再構築を実現する。女性の社会進出はもとより、あらゆる多様な個人の社会参画を支援し、誰もが活躍の場を見出せる一人も取り残さない社会を実現する。
(7) 機会平等
国民全体に開かれた社会を実現し、教育の無償化を通じて、国民の自主的な努力による自己実現の機会の均等化を図る。能力以外の基準による就労の機会の不平等を排除し、また、能力の再開発の機会を保障することによって、国民の誰もがその努力に応じて等しく活躍の機会を得られる社会を実現する。
(8) 法の支配
「法の支配」「自由主義」「民主主義」の価値観を共有する諸国と連帯する。現実的な外交•安全保障政策を展開し世界平和に貢献するとともに、世界各地で起こる深刻な人権侵害に対しても国際的な枠組みの中で解決に向けた行動を促進する。
国際紛争を解決する手段として国際司法裁判所等を積極的に活用する。
4 政治団体としての日本維新の会
(1) 身を切る改革
日本維新の会は「政治家を身分から職業へ」の政治理念のもと、政治家の既得権に厳しく切り込み、政治および行政に対する不断の改革を行うとともに、その模範となるべく先ずは率先して政治家が身を切る改革を断行する。
(2) 民意に基づく政治
日本維新の会は古い政治に対する国民の怒りから発足した政党である。従って政策決定においては常に国民の理解を重視し、永田町や霞ヶ関をはじめとした政治・行政側の論理や慣行に迎合することなく、常に国民の目線に立ち、国民が納得のいく政策の実現を指向する。
(3) 実行する政治
日本維新の会は現実を変えるための政治集団であることを自負し、机上の理想論を積み重ねることよりも現実的な政策を実行することを重視し、それにより国民生活を豊かにする。スピード感のある意思決定と、決めたことを実践する実行力によって国民の政治への信頼を回復し、もって党勢の拡大を図る。
(4) 透明性
情報の徹底した公開は民主主義の根幹である。日本維新の会は重要政策の決定に際して、政治のブラックボックスを徹底して排除し、国民的な議論を踏まえた上で意思決定を行う。
(5) 組織
① 日本維新の会は、これまでの国・都道府県・市町村の議員がピラミッド型に並ぶ中央集権型の政党とは異なり、国と地方の水平的な役割分担のもと、地方から国を変えるための政党として、各議会議員が組織内の役割を分担する。
② 特別党員の公認、処分およびその他一切の賞罰については、その合理性、一貫性、および透明性の観点から意思決定プロセスを組織内に明らかにし、別途党規約に定める明確で統一的な基準を持って運用にあたる。
③ 綱領および党規約の改正にあたっては党大会を最高意思決定機関とし、民主的な手続きの元、構成員の総意を持って決定するものとする。
附則
この綱領は、平成27年10月31日から施行する。
附則
この改正要綱は、本党の名称変更に関する議案に係る党大会決定と同時に施行する。
附則
この改正綱領は、令和4年3月27日から施行する。